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市販ハード・エンコーダに迫る新Core iシリーズQSV機能

 :第2世代のCore iシリーズ「Sandy Bridge」CPUの内蔵グラフィックスに搭載された動画アクセラレータ「QSV機能」は、市販のハードウェア・エンコーダーに迫る性能を持つようになったのだろうか?
(Update 2024. 3.24)

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市販ハード・エンコーダに迫る新Core iシリーズQSV機能

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【本ページと関係深いページ】 :
  高速エンコーダの現状−インテルQSV機能と外付GPUカード
  3DCG制作入門向けパソコン -Blenderが快適


 2011年1月に発売された第2世代の新Core i シリーズ「Sandy Bridge」CPU(Core i7 / i5 / i3 - XXXX4桁)に内蔵されたグラフィックスは、第1世代のIntel HD Graphics から、Intel HD Graphics 2000/3000と大きく進歩しました。
(GPU性能の位置付けは、GPU搭載のBTOノート一覧のページへ)

 このインテルグラフィックスに新しく搭載された動画アクセラレータ「QSV機能」は、市販のハードウェア・エンコーダーに迫る性能を持つようになったのだろうか?

 ※注記)従来のCore i シリーズ内蔵GPUがHD( High Definition )動画のデコーダ搭載のみだったのに対して、QSVでは、MPEG-2およびH.264(MPEG-4 AVC)のエンコーダが搭載された

 今回は、この「クイック・シンク・ビデオ(Quick Sync Video :QSV) 機能」の性能をよく知るため、ハードウェア・エンコーダーを製品化しているメーカーサイトを中心に調査して見ました。

 本調査のきっかけは、日経Win-PCの3月号、5月号掲載の「新Core i プラットホーム研究:新Core iシリーズは動画エンコードが速い」という記事によれば、『1パスで画質は落ちるが、ペガシスのTMPGEnc Video Mastering Works 5 で搭載の標準エンコーダX264より、4〜5倍速い』という内容からでした。


 ← SpursEngineの基板

 まず、予備知識として、比較相手である、現在H.264まで変換できるハードウェア・エンコーダを製品化している代表的メーカーについて書いて置きます。

 いずれも東芝が開発した、SpursEngine(スパーズエンジン)を採用しています。現在のところ(業務用途を除くと)、このエンジン利用以外のH.264まで変換できるハードウェア・エンコーダと言うのは、見当たりませんでした。

 ※注記)SpursEngineは、東芝が開発した、Cell(Cell Broadband Engine)をベースにしたLSIであり、Cellに搭載されているSPEを低クロック化したものを4基搭載し、さらにMPEG-2およびH.264(MPEG-4 AVC)のハードウェアエンコーダ・デコーダを搭載する。


 まず、拡張PCIカードからですが、下記の2つです。

【アクセラレータカード(PCI Express接続)タイプ】

 ●カノープス:FIRECODER Blu 付属ソフトはFIRECODER WRITER

 ●リードテック(Leadtek):WinFast PxVc1100
 拡張カードと、高画質マルチビデオエンコーダーソフトとして評価の高いペガシス社のTMPGEnc 4.0 XPress と Movie Plug-In SpursEngine をセットにしている。


 今回、上のカノープスのPCI-exカード「FIRECODER Blu」でのメーカーホームページのデータ図からです。

 本カードのエンコードの実力ということで、

「HDVからH.264への変換を素材時間(10分)の約1/2の時間(4分30秒)で行える。SD画質のMPEG2からSD画質のH.264であれば、約1/4の時間で変換可能である。」としています。


 ※注記)ハイビジョンHDV( MPEG2 ) 1080/60i からH.264 1440×1080/60iに変換する速度を計測。ソフトウェアエンコードはCore 2 Quad 2.83GHzのPCを使用。(ただしPC環境や素材により結果が異なる場合があり、この測定結果を保証するものではない。)

 このデータで注目したいのは、ソフトエンコードの時間比較(23分20秒の19%、約1/5)ではなく、素材時間10分の約45%(4分30秒)で、本拡張PCIカードでエンコードできたという点です。

 次に、東芝はノートPC本体にアクセラレータカードとして、搭載しています。

【ハード・エンコーダ搭載したAVノートタイプ】


 ←当時の最新モデルdynabook Qosmio T750 Webオリジナル

 一方、もう一つの実測データとして、価格コムのレビュー報告があります。

 SpursEngine(スパーズエンジン)搭載の東芝AVノートQosmio G65W( Core i7-620M 、GeForce GT330M)で、家庭用デジタルビデオカメラで撮影した約1時間のハイビジョン動画映像(AVCHD形式、3.18GB)を、BD-Rディスクにダビングした内容の報告です。

 「SpursEngine非搭載のPC( Core i5-450M 、インテルHD グラフィックス)では処理が終了するまでに51分53秒かかったが、本AVノートでは、SpursEngine(スパーズエンジン)の能力で、1/6以下のわずか8分8秒という短時間でダビングが終了した。」と言うものです。

 ※注記)東芝のQosmio G65Wページ記載には、「作業時間を約1/5に抑えてスピーディにダビングできる」とあり、注記として、HDVの映像(1,440×1,080ドット/25Mbps)をH.264形式(1,440×1,080ドット/10Mbps)に変換してBD-R/REに書き込む場合と但し書きがある。

 この価格コムのレビューデータでも注目したいのは、エンコード時間の直接比較(約1/6)ではなく、1時間のカメラ映像(AVCHD形式)ソースが→ 8分8秒(488秒)、つまり素材時間の約14%の圧倒的な短時間でエンコード処理できたという点です。


 さて、本ページのテーマである、新Core i シリーズCPUコア内蔵エンコーダ「Quick Sync Video (QSV)」機能は、ここまでに書いて来た、これらのハード・エンコーダ性能に迫ったのでしょうか?


【新Core iシリーズSandy Bridgeコア内蔵エンコーダの性能測定例】

 新Core iシリーズCPUコアのGPU部に内蔵されたこのQSVエンコーダは、マザーボードのチップセットがP67ではなく、H67の方を搭載した環境で、かつCPU内蔵グラフィックス機能をプライマリーディスプレー設定にする環境のみで動作します。(外付けグラフィックカードは、セカンダリーディスプレー)

【日経Win-PC5月号の測定例】

 日経Win-PCの5月号掲載の「新Core i プラットホーム研究:新Core iシリーズは動画エンコードが速い」という記事(108ページ)では、5種類の動画編集ソフトでエンコード時間が測定されている。

 ペガシス社の人気エンコードソフトTMPGEnc 4.0 XPress の後継「TMPGEnc Video Mastering Works 5」や、コーレルの動画編集オーサリングソフト「VideoStudio Ultimate X4」、サイバーリンクの「PowerDirector 9 Ultra64」、「Media Espresso 6.5」、「ロイロスコープ2」の5つである。

 この測定時の素材映像ソースは、下記
 ●HD動画:MPEG-2 TS形式ファイル1920 x 1080ドット、15分

(また、PCパーツは、CPU : Core i7-2600K(3.4GHz)、つまり内蔵のグラフィックスは、Intel HD Graphics 3000(※注記1)、マザーボード:H67MP-S(Foxconn)、メモリー:4GB デュアル、OS:Windows 7 Ultimate 64 だった。)

 【HD動画をH.264にエンコードした結果】 

 1.ペガシス「TMPGEnc Video Mastering Works 5」では、標準ソフトエンコーダ(X264)設定で、29分16秒、インテルQSVエンコーダ設定が、8分16秒(約1/4)となった。
 ただし、「1パスで、画質を上げるための2パスエンコードが出来ない。VBR(可変ビットレート)に出来ない」などで画質が落ちたと言う。

 2.コーレル「VideoStudio Ultimate X4」では、ハードウェアエンコード/デコード無効(つまりソフト処理)で12分46秒、ハードウェアエンコード/デコード(インテルQSV)有効設定で、5分36秒(約1/2)となった。

 3.サイバーリンクの「PowerDirector 9 Ultra64」では、ハードウェアエンコード/デコード無効(つまりソフト処理)で14分13秒、ハードウェアエンコード/デコード(インテルQSV)有効設定で、3分40秒(約1/4)となった。

(「PowerDirector 9 」のレンダリングエンジン「TrueVelocity Parallel 」ブロック図を、下の方の【GPGPUの役割分担について】に掲載しました。)

 4.サイバーリンクの「Media Espresso 6.5」では、ハードウェアエンコード/デコード無効(つまりソフト処理)で7分24秒、ハードウェアエンコード/デコード(インテルQSV)有効設定で、2分28秒(約1/3)となった。

 5.ロイロスコープ2は、β版なので省略。


 この測定結果を眺めてみると、

 ●各々のソフトエンコード時間に対して、インテルQSVエンコーダ処理では、約1/2〜1/4(25%から50%)と2倍から4倍速い。

 ●映像ソースの素材時間15分に対しては、2分28秒〜8分16秒と、16%〜55%のエンコード時間が測定された。(一部のSD動画エンコードでは5倍以上)

 各々のソフトエンコード時間に対して、「2倍から4倍速い」と言うのは、確かに速いのですが、相対的なデータです。(各々のソフトエンコード時間が、つまり元が遅ければ4倍でも速くはない。)

 これに対し、素材時間15分に対して、2分28秒となったサイバーリンクの「Media Espresso 6.5」での、素材の16%のエンコード時間は、極めて速いものと思われます。


【ペガシスの測定例】

 ペガシス社の人気エンコードソフトTMPGEnc 4.0 XPress の後継機種、「TMPGEnc Video Mastering Works 5 (ティーエムペグエンク ビデオ マスタリング ワークス 5)」で、上記に似た実測例がメーカーサイトに掲載されていました。

 この測定時の素材映像ソースは、下記
 ●AVCHD 1920 x 1080、 29.97fps、 5分4秒、 9133フレーム

 この「TMPGEnc Video Mastering Works 5」で、インテルQSVエンコーダ(Intel Media SDK)動作設定し、H.264変換測定データの結果グラフです。

(測定環境は、Sandy Bridge CPU (3.0GHz)、メモリー:8GB、OS:Windows 7 Ultimate 64)

 グラフから、

 ●ペガシスのソフトデコーダ+標準ソフトエンコーダ(X264)設定(青色のグラフ)では、約746秒だったものが、ペガシスのソフトデコーダ+インテルQSVエンコーダ(Intel Media SDK Encoder)設定(緑色のグラフ)に変えると、約153秒(約1/5)と、5倍高速になった。

 (各社のソフトエンコード時間に対して、「X倍速い」と言うのは、確かに速いのですが、あくまで相対的なデータですので、)
 ●素材映像ソース時間5分4秒(304秒)との比較では、約1/2であり、素材時間の約50%となった。


 以上の2例から、エンコード処理する映像ソースの素材がすべて同じでの測定データ比較なら、性能の優劣がハッキリして来ますが、それは今回の調査方式では無理です。


【結論的には】

 結論的に、今回の調査で言えるのは、各々測定の条件が違いますが、

(ハード・エンコーダの代表としての)
 ・カノープスのPCIカード「FIRECODER Blu」のエンコード時間が、素材時間の約45%だったこと、
 ・東芝ノートQosmio G65Wでは素材時間の約14%(メーカーデータは20%)と言う圧倒的な短時間だった

 というデータに比較しても、

 素材時間の16〜55%という「QSV」の動画エンコーダ性能は、まったく遜色ないレベル

 と言えるかも知れません。

 ただ、非常に残念なのは、CPU内蔵グラフィックス機能をプライマリーディスプレー設定にする環境のみで動作するため、ゲームなどの3D描画性能を上げるために、性能の高いグラフィックカードを追加しても、このカード側動作では動画エンコーダとしてQSV機能は使えないことになります。(Windows 8 では使えるようになりました)→下記の重要な注記参照方

 このIntel HD Graphics 2000/3000のグラフィックス性能は、Radeon HD 5450前後レベルとかなり低いのです。その位置付けは、GPU搭載のBTOノート一覧のページでチェックしてみて下さい。

最後に、

 外付けグラフィックカード(とQSV機能)を同時に使えないという問題を解決する面白い技術が日経Win-PCの5月号101ページに出ていました。それは、Lucidlogixs の「Virtu」という自動切換えするソフトですが、その詳細は5月号紙面をご覧下さい。(下記の重要な注記を参照方)

 【重要な注記】

 ●この自動切換えするソフトを使わなくても、グラフィックカードとQSV機能を同時に使う方法として、マルチモニター接続にすると言う方法があります。つまり、グラフィックスカードとマザーボード内蔵GPUの出力端子の双方が映像モニターに接続されている場合にのみQSVが有効になります。

 この場合は、必ず、デバイスマネージャなどで両者のビデオドライバーが有効になっていることを確認して下さい。(プライマリーディスプレーにカード側を接続、セカンダリーにマザーボード内蔵のIntel HD Graphics 側出力の接続でも構わないようです。)

 ●さらに、Windows 8 利用との絡みで、もっと状況が改善してきました。これは、対象のCPUが Ivy Bridge 世代以降ということなのですが、「QSVと単体GPUの同時利用」を、Windows 8 環境でサポートした Ivy Bridge向けグラフィックスドライバが出たことによります。(2013年4月)

 さらに、このIvy Bridge向けグラフィックスドライバは、Windows 8 だけでなく、Windows 7 にも対応しているのですが、Windows 7では無理のようです。

 この「Windows 8 + Ivy Bridge 世代以降CPU」の環境下では、単体GPUカードがプライマリーディスプレー接続でもQSV利用可能になったようです。つまりゲームPCなどグラフィックスカードがプライマリーとなるPCでも、QSVが使えるようになった訳です。

 ここからの続きは、「高速エンコーダの現状−インテルQSV機能と外付GPUカード」へ

 2011年5月7日追記

 【ビデオ編集用PC(参考)例】

 ◆ツクモのノンリニアビデオ編集パソコンE-GEAR:EM7J-B31/S (ミニタワーモデル) :¥119,980

 :編集ソフトEDIUS Neo3


 ※注記1.日経Win-PCの3月号38ページ掲載のグラフでも、 Intel HD Graphics 3000( Core i7-2600K)とIntel HD Graphics 2000( Core i7-2500K/2500)の違いで、エンコード時間も2倍くらい違う点(ただしペガシスTMPGEnc の場合)に注意したい。(HD Graphics 3000の方が2倍速い。GPU内蔵の汎用計算コア、つまりベクトル演算ユニットの数が、2倍(12個と6個)違うためと思われる。)


【本ページと関係深いページ】 :

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